2026/10/19 10:00
レッスン前の馬装で、いつものプロテクターを付ける。左右を確認して留め具を閉じたら準備完了。
そのとき「これは何から脚を守っているんだろう」と考えたことはありますか。
脚を包むもの。前側が開いているもの。
蹄の上にかぶせるもの。同じ脚の保護用品でも、形が違うのには理由があります。
今回はブラッシングブーツ・前肢用プロテクター・後肢用プロテクター・ベルブーツの違いを見ながら、
3商品をご紹介します。
💡 ブラッシングブーツも、プロテクターの一種です
「ブラッシングブーツとプロテクターは何が違うの?」と迷うことはありませんか。
まず整理しておきたいのが、ブラッシングブーツも脚を保護するプロテクターの一種だということです。
商品名では「Brushing boots」「Tendon boots」「Fetlock boots」など、
形や用途に応じた呼び方が使われています。
「ブーツ」と書かれていても、人が履く靴のことではありません。
名前だけを覚えるより、どこを覆う形なのかを見てみると分かりやすくなりますね。
また、用途には重なる部分もあります。
「このタイプだけが擦れを防ぐ」「こちらは腱だけを守る」と完全に分かれるわけではありません。
守りたい場所と馬の動きに合うかを考えて選びたいところです。
🖤 ブラッシングブーツ|脚同士の接触や擦れへの備え

Brushing Boots HORSEGEAR Liam Black
内側に柔らかなフェイクファーを備えたブラッシングブーツです。
面ファスナーで固定する仕様で、左右2個セット。
サイズによって留め具の本数が異なります。
「ブラッシング」という名前は、馬の毛をブラシで手入れすることと混同しやすいかもしれませんね。
ここでは、動いているときに片方の脚がもう片方へ触れたり擦れたりすることを指します。
馬の脚は、障害物など外からの物だけでなく、自分の脚や蹄との接触で傷つくこともあります。
BHS(英国馬術協会)も、ブラッシングブーツをこうした接触から脚を保護する用品として説明しています。
このタイプは、脚の内側に保護部分を備え、脚を包むように固定するものが多くあります。
前肢用・後肢用の製品があり、普段の平地での運動などにも使われます。
ただし、すべての製品が前後兼用というわけではありません。
Liamは、脚に触れる内側の素材にも目を向けたい商品です。
フェイクファーの柔らかな質感を好む方もいるでしょう。
ただ、肌触りがよいことと、その馬の脚に合うことは別に確認したいですね。
購入時は長さと周囲のフィット、前後どちらに使うかを確認しましょう。
左右2個セットは一対分なので、四肢分をそろえる場合は必要な組数も見ておきたいところです。
👉 Brushing Boots HORSEGEAR Liam Blackの詳しい情報はこちら
🤍 前肢用プロテクター|前肢の後ろ側を覆うタイプ

Tendon Boots Epplejeck Proride White
外側に丈夫なプラスチック製のシェル、内側にネオプレンを使用した前肢用プロテクターです。
伸縮性のある面ファスナー式の留め具を備え、前肢の左右2個セットで販売されています。
汚れを落としやすい仕様も特徴です。
商品名の「Tendon」は腱のこと。
一般的なテンドンブーツは、前肢の後ろ側や側面を覆い、前側が開いた形になっています。
障害飛越でよく見かけるタイプですね。
ブラッシングブーツと見比べると、包み方や硬い外殻の位置が違うことに気づくのではないでしょうか。
前肢の後ろ側には腱が走っています。
テンドンブーツは、その周辺への外からの接触に備える用品として考えると理解しやすくなります。
ただし「腱を保護する」と「腱にかかる負担をすべて防ぐ」は同じではありません。
外から当たるものへの保護と、運動中に脚の内部へかかる負担は分けて考えたいところです。
プロテクターを付けていれば腱の故障を防げる、とまではいえません。
Prorideは硬い外殻と柔らかな内側を組み合わせた構造。
選ぶときには、外殻が守りたい位置へ収まるか、縁が動きを妨げないかまで確認したいですね。
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🐎 後肢用プロテクター|後肢の球節周辺を守るタイプ
前肢には長いプロテクター、後肢には短いものを付けている馬を見かけませんか。
その短いタイプの代表が、英語で「Fetlock boots」と呼ばれる後肢用プロテクターです。
「Fetlock」は球節のこと。蹄より上、管の下端にある丸みを帯びた関節部分です。
後肢用プロテクターは、主に後肢の内側の球節周辺を接触から守る構造です。
メーカーのQHPも、後肢用プロテクターを球節への接触に備える用品として説明しています。
前肢用をそのまま短くしただけというより、
後肢で守りたい場所に合わせた道具と考えると分かりやすいですね。
障害飛越では前肢用と組み合わせて使われることが多くあります。
ただし、同じシリーズで見た目がそろっていても、前後では形と装着位置が異なります。
ここで覚えておきたいのが、後肢にはこの短いタイプしか使えない、という意味ではないことです。
後肢用のブラッシングブーツもあります。球節周辺を中心に覆うものと、
より広い範囲を包むものでは形が違うので、使う馬と運動内容に合わせて選びたいですね。
今回ご紹介したProrideは前肢用の一対です。後肢用も必要な場合は別に確認してください。
🤎 ベルブーツ|蹄の後ろ側への接触に備えるタイプ

Bell Boots Eskadron Allround Dark Brown
蹄の上からかぶせるベル型の保護用品です。
外側には合成レザー、内側にはネオプレンを使用し、幅広の面ファスナーで固定します。
こちらも左右2個セットです。
ここまでの3タイプより、低い位置を覆っているのが分かりますね。
主に備えたいのは、後肢の蹄が前肢の蹄の後ろ側へ当たる「オーバーリーチ」という接触です。
馬が動く際に、後肢の蹄が前肢の蹄の後ろ側へ追いついて当たることがあります。
その接触で、蹄の後ろ側にある柔らかな部分などを傷つけることがあります。
BHSも、こうした傷が起こりやすい馬に、適切にフィットしたベルブーツを使うことを案内しています。
脚のプロテクターとベルブーツを両方付けている馬もいますね。
これは単に同じ場所を二重に覆っているのではなく、脚の上の部分と蹄の後ろ側という、
異なる場所への接触に備えていると考えると分かりやすくなります。
Allroundは、落ち着いたダークブラウンの合成レザーにネオプレンの裏地を合わせた仕様です。
面ファスナーを開いて着脱できるため、かぶせて引き上げるタイプとは付け方も異なります。
購入時は蹄の大きさに合うか、守りたい後ろ側まで覆えるかを確認したいですね。
👉 Bell Boots Eskadron Allround Dark Brownの詳しい情報はこちら
🌡️ 厚く覆うほど安心、とは限らない?
守る場所の違いが分かったら、次はフィットと使い方にも目を向けてみませんか。
プロテクターは締めすぎればよいものではなく、緩くてずれやすい状態も避けたいところです。
長さと周囲のサイズが合い、動きを妨げない位置へ装着することが大切です。
FEI(国際馬術連盟)も、締めすぎやずれの危険性と、適切なフィットの重要性を説明しています。
さらに知っておきたいのが、脚を覆うことで温度が変わることです。
2014年の研究では、成馬10頭を対象に20分間の調馬索運動を行い、
バンデージや前肢用プロテクターを装着した部分の皮膚温度が上昇したことが報告されています。
この研究で測定したのは皮膚温度です。
腱内部の温度や故障の発生を直接調べたものではなく、
今回の3商品を比較した試験でもありません。
別の素材や構造で同じ結果になるとも限らないため、
「プロテクターは腱を傷める」と結論づけることはできません。
選び方のヒントとして考えたいのは、丈夫さや厚みと一緒に通気性にも目を向けることです。
BHSの教材でも、ブラッシングブーツの設計で考える要素として通気性や軽さ、
衝撃への配慮、脚へのフィットが挙げられています。
また、装着前には脚とプロテクターの内側を確認しておきましょう。
間に砂や汚れが残っていると、動くうちに擦れの原因になることがあります。
保護するための道具だからこそ、脚に触れる面まで見ておきたいところです。
🐴 次の馬装で「どこを守っているか」を見てみませんか
ブラッシングブーツも前肢用・後肢用プロテクターも、
接触から脚を守るという目的には共通する部分があります。
違いは、覆う範囲や形、使う場面です。
一方でベルブーツは、蹄の後ろ側への接触に備えるもの。脚を包む用品では届かない場所を覆っています。
すべてを毎回付ける必要があるという話ではありません。
クラブで乗る場合は、いつもの馬にどんな理由でその用品を使っているのか聞いてみると、
理解が深まりそうですね。
乗馬用品の通販でプロテクターを探すときも、
色やサイズと一緒に「どこを守りたいか」を確かめてみてください。
次のレッスンで、前肢と後肢の形を見比べてみませんか。
いつもの馬装にも、まだ知らなかった理由が見つかるかもしれません。
📚 参考資料
FEI(国際馬術連盟)|馬の脚の保護用品の種類とフィット
ブラッシングブーツ・前肢用・後肢用・ベルブーツの用途と装着時の注意について。
BHS(英国馬術協会)|馬の取り扱い教材「Handling your Horse」〈英語・PDF〉
13ページにブラッシングブーツの役割とフィット、通気性などの説明があります。
BHS(英国馬術協会)|オーバーリーチと蹄の後ろ側の傷について
後肢の蹄による接触とベルブーツの使用について。
Westermannほか(2014)|バンデージ・前肢用プロテクターと脚の皮膚温度に関する研究
記事中で紹介した皮膚温度の研究です。
いずれも英語の資料です。
