2026/10/16 10:00
日本の乗馬クラブでは、会有馬に使用するハミをダブルジョイントに限定しているところも多くあります。
理由としてよく聞くのが、
「ダブルジョイントの方が当たりがやさしいから」
というものです。
たしかにダブルジョイントは、中央にも可動部分を持つため、
シングルジョイントとは口の中での折れ方が違います。
一般的にも、馬の口への当たりを穏やかにしたいときに選ばれることの多い形です。
だからクラブで、
「会有馬にはダブルジョイントを使ってください」
と言われても、それほど疑問を持つことはないかもしれません。
でも、ここで少し気になることがあります。
💭 ダブルジョイントなら、どれも同じくらい優しいのでしょうか。
実物を並べてみると、中央のパーツもジョイント部分もかなり形が違います。
丸いもの。
平たいもの。
ジョイントが縦を向いているもの。
横を向いているもの。
ローラーが入っているもの。
実はこうした小さな違いによって、馬の口の中で圧がかかる場所や、
手綱の扶助に対する反応の出方も変わってきます。
今回はスウェーデンのハミブランド「Fager」が公開している資料をもとに、
同じダブルジョイントでも何が違うのかを見ていきます。
📖 同じダブルジョイントでも、こんなに違う

画像出典:Fager® / Fager Bits
日本語訳:LAURO Tack
※Fagerより本投稿画像の使用許可を得て掲載しています。
👉 Fager公式「What difference does the shape of the joints?」
Fagerの資料では、ジョイントや中央パーツの形状による違いを6つに分けて紹介しています。
画像だけを見ると、どれも「ダブルジョイントのハミ」です。
でも一つずつ見ていくと、それぞれ少しずつ性格が違います。
① 滑らかなジョイント|Smooth joints
まずは、ジョイント部分を滑らかに仕上げたタイプです。
Fagerでは、舌への圧がより穏やかになり、コンタクトも安定しやすい形として紹介されています。
手綱の扶助に対して過敏に反応しやすい馬にも向いているとされています。
例えば、少し手綱を取っただけで頭を上げたり、コンタクトが途切れやすかったりする馬。
そんな馬には、反応をさらに鋭くするよりも、まず安定して受けられる形の方が合う場合があります。
🌿 同じダブルジョイントでも、
こちらは比較的「穏やかさ」や「安定感」を意識した形と考えると分かりやすそうです。
② 形状をつけたジョイント|Shaped joints
一方こちらは、ジョイント部分に少し形を持たせたタイプです。
Fagerによると、必要なときに圧が局所的にかかりやすくなり、手綱を取ったときの反応も速くなります。
また、扶助を入れたときと、手綱を緩めたときの違いも馬に伝わりやすくなるとされています。
つまり、
滑らかなジョイント
→ より穏やかで安定した方向
形状をつけたジョイント
→ より反応を明確にする方向
という違いがあります。
⚖️ ここだけ見ても、
「ダブルジョイントだから全部同じ」
とは言えないことが分かります。
③ 平たい中央パーツ|Flat centerpiece
今度は、ダブルジョイントの中央部分を見てみます。
中央の短いパーツは、丸いものばかりではありません。
平たい形をしたものもあります。
Fagerでは、形状をつけたジョイントと平たい中央パーツを組み合わせることで、
丸い中央パーツよりも圧が局所的にかかりやすくなると説明しています。
さらに面白いのが、その角度です。
同じ平たい中央パーツでも、約45度の角度がついている場合には、舌への圧がさらに加わります。
逆に、角度をつけずフラットに収まる場合には、その追加の舌圧は生まれにくくなります。
🔍 つまり、
「中央が平たい」
だけではなく、
「馬の口の中で、そのパーツがどの向きになるのか」
まで見た方がいいということです。
ほんの少しの角度ですが、その違いにも意味があります。
④ ローラー付き中央パーツ|Roller centerpiece
中央部分にローラーが入ったタイプもあります。
Fagerでは、形状をつけたジョイントと組み合わせることで、
動きのある局所的な圧がかかり、よりしなやかな感触になると説明しています。
さらに、ローラーが大きくなるほど作用も大きくなります。
ローラーが付いているだけを見ると、
「馬が遊べるように付いているのかな?」
と思うこともありますが、単なる飾りではありません。
🔄 中央部分が動くことで、固定された中央パーツとはまた違った刺激になります。
ここでも、同じダブルジョイントの中で「動き」が加わるわけです。
⑤ 縦方向のジョイント|Vertical joints
ここは、今回のFagerの資料の中でもかなり面白いところです。
ジョイントが縦方向になるタイプ。
Fagerでは、横方向のジョイントに比べて、舌と口蓋への圧が強くなりやすいと説明しています。
そのため、手綱を取ったときの反応も速くなる場合があります。
👀 一見すると、ほんの少しジョイントの向きが違うだけです。
でも、その向きによって口の中での当たり方まで変わります。
ハミを見るときに「縦か横か」まで意識したことがない方も多いのではないでしょうか。
⑥ 横方向のジョイント|Horizontal joints
こちらは逆に、ジョイントが横方向に寝るタイプです。
口の中でよりフラットに収まりやすく、縦方向のジョイントよりも舌への圧が穏やかになります。
Fagerでは、コンタクトも安定しやすく、手綱の扶助に対して過敏に反応する馬にも向くとしています。
⑤と⑥を並べてみると分かりやすいですね。
どちらもダブルジョイント。
でも、
縦方向
→ 舌や口蓋への圧が増え、反応が速くなりやすい
横方向
→ よりフラットに収まり、穏やかなコンタクトを作りやすい
という違いがあります。
🧩 「ダブルジョイントしか使えない」=選べない、ではない
日本の乗馬クラブでは、会有馬に使えるハミをダブルジョイントに限定している場合があります。
すると、
「ダブルジョイントならどれでもいい」
と思ってしまいがちです。
でも今回の6種類を見ると、かなり違いますよね。
滑らかなジョイント。
形状をつけたジョイント。
平たい中央パーツ。
ローラー。
縦方向。
横方向。
全部ダブルジョイントです。
それでも、舌への圧や口蓋への作用、コンタクトの安定感、手綱を取ったときの反応は同じではありません。
だからハミを見るときには、
「ダブルジョイントかどうか」
だけでなく、
「どんなダブルジョイントなのか」
まで見てみると、かなり印象が変わります。
🤔 「強いハミ」「優しいハミ」だけでは分からない
ハミについて話していると、
「これは強いハミ」
「これは優しいハミ」
という言葉をよく使います。
もちろん、分かりやすい表現です。
ただ、実際の作用はもう少し複雑です。
舌にどのくらい圧がかかるのか。
口蓋にはどう当たるのか。
圧が広くかかるのか、それとも局所的にかかるのか。
口の中で安定するのか、動きがあるのか。
手綱を取ったときに反応が早いのか。
緩めたときに、その変化がどれくらい明確なのか。
こうした要素が組み合わさって、一つのハミの性格になります。
だから、
「優しいハミが欲しい」
だけで選ぶより、
「今、この馬はハミに対してどんな反応をしているんだろう?」
と考える方が、ずっと大切なのかもしれません。
🤲 そして一番大切なのは、ハミよりも「拳」
ここまで、ダブルジョイントの形によって作用が変わることを見てきました。
Fagerの資料を見ると、本当に細かいところまで考えて設計されていることが分かります。
どれだけ「優しい」と言われるハミを選んでも、忘れてはいけないことがあります。
結局は、馬の口の中に一本の金属を入れてそれを手綱を通して人が操作していることに変わりありません。
だから、ハミの種類を考える前にまず必要なのは、
「拳をじっと安定させること」
なのだと思います。
馬の動きについていく。
必要以上に引かない。
扶助を伝えたら、きちんと緩める。
馬の頭や首が動いても、それを拳で押さえ込もうとしない。
乗馬を始めたころから何度も言われるような、本当に当たり前のことです。
でも、その当たり前の技術こそが、馬の口に対する一番の「優しさ」なのかもしれません。
🌱 ダブルジョイントだから優しい。
この素材だから優しい。
このブランドだから優しい。
それだけでは決まりません。
どんなハミを使うかと同じくらい、
「そのハミを、どんな拳で使うのか」
が大切です。
会有馬だからダブルジョイント。
そのルールには、馬への負担をできるだけ抑えたいという考えがあります。
でも、ダブルジョイントに変えただけで馬の口が守られるわけではありません。
まずは拳を安定させる。
そのうえで、
「このジョイントはどんな形で、どんな作用をするんだろう?」
と考えてみる。
✨ ハミを選ぶときには、その順番を忘れないようにしたいですね。
※本記事はFager公式Knowledge Base「What difference does the shape of the joints?」を参考に、
日本語で再構成・解説しています。
画像出典:Fager® / Fager Bits
日本語訳・解説:LAURO Tack
※掲載画像はFagerより使用許可を得ています。
👉 Fager公式「What difference does the shape of the joints?」
