2026/08/24 10:00
みなさんは普段のレッスンでどんな馬に乗っていますか?
日本の乗馬クラブではサラブレッドをよく見かけますよね。その中でも多いのが競馬を引退した元競走馬です。
もちろんクラブによっては日本乗系種などもいます。
それでも日本で乗馬をしている人にとって、サラブレッドはかなり身近な存在ではないでしょうか。
一方、競技会で目につくのがいわゆる「外馬」です。レベルが上がるほどその存在感も大きくなります。
KWPN(オランダ温血種)、ハノーバー、ホルシュタイナー、オルデンブルク、
ベルジャン・ウォームブラッドなど。ヨーロッパでスポーツホースとして生産されてきた馬たちです。
馬場馬術なら大きく華やかな動き。障害馬術なら力強い跳躍。
競技をやっていると
「一度でいいから、あんな馬に乗ってみたい」
と思ったことがある人も多いのではないでしょうか。
ところが日本の一般的な乗馬クラブでは、
そういった馬が何頭もレッスンに出ている環境はなかなかありません。
本格的に乗りたければ自馬として所有する。そんな選択肢になってくることも多いですよね。
全日本クラスの競技会を見ても、
上位クラスではヨーロッパでスポーツホースとして生産された馬たちが目立ちます。
一方、内国産馬を対象とした競技ではサラブレッドの姿を見ることも珍しくありません。
🤔 そうすると自然と
「やっぱり最初から乗用馬として生産された外馬の方が能力が高いんだろうな」
というイメージを持ちます。
そして平均的に考えれば、それはたぶん間違っていません。
馬場馬術に適した動きや体型。障害を飛ぶ能力。
スポーツホースはそうした能力を何世代にもわたって選抜してきました。
対するサラブレッドは速く走ることを目的として改良されてきた馬です。
同じ条件で競技馬を探すなら、
その競技のために何世代も選抜されてきたスポーツホースの方が有利なのは当然でしょう。
でも――
🔥 だからといって、サラブレッドに乗用馬としての才能がないわけではありません。
それを改めて感じさせてくれたのが2026年アーヘン世界選手権の総合馬術でした。
🏇 本当に競馬を走っていた馬が世界選手権14位

オーストラリア代表Sophia Hill(ソフィア・ヒル)が騎乗したHumble Glory(ハンブル・グローリー)。
大会公式リザルトの品種欄には「TB(Thoroughbred)」と記載されています。
しかもHumble Gloryは単にサラブレッドとして生産された馬ではありません。
競走馬時代の名前はCamon Houdini。実際にレースを走った経験を持つ元競走馬です。
平地だけでなく障害競走にも出走しています。
つまり経歴だけを見れば、日本の乗馬クラブにもいる
「競馬を引退して第二の馬生で乗馬へ転向したサラブレッド」
とつながるものがあります。
そんな馬が競馬とはまったく違う世界で才能を伸ばしました。
そしてたどり着いたのが総合馬術の世界選手権です。
その成績がすごいんです。
馬場馬術は37.6点。
クロスカントリーは障害減点0・タイム減点0。
そして最終日の障害馬術も減点0。
👏 最初の馬場でついた37.6点から1点も増やすことなく世界選手権を完走しました。
最終成績はなんと個人14位です。
世界中から集まったトップクラスの総合馬を相手に、実際に競馬を走っていたサラブレッドが14位。
しかもクロスと障害は両方とも減点0です。
これはなかなか夢のある結果ではないでしょうか。
💃 馬場で71%を取るサラブレッドも
もう一頭注目したいのが、
ニュージーランド代表Monica Spencer(モニカ・スペンサー)のArtist(アーティスト)です。
Artistも公式リザルトではTB。2011年生まれのサラブレッドです。
こちらは競走馬として生産・育成された馬です。
トライアルには出たもののHumble Gloryとは違い、正式なレースへの出走経験はありません。
Artistで特に面白いのが馬場馬術の成績です。
世界選手権で記録した馬場の減点は28.9。
総合馬術では「100-得点率」が馬場の減点になります。つまり得点率は71.1%です。
もちろん純馬場馬術のグランプリで71%を取ったわけではありません。あくまで総合馬術の馬場課目です。
それでも世界選手権という舞台でサラブレッドが70%を超える演技をしています。
「サラは走る馬だからクロスなら得意なんでしょ」
だけでは片付けられません。
適性を見つけて時間をかけて調教すれば、
サラブレッドでもここまで馬場のクオリティを高められるという実例です。
「サラだからすごい」でもない
この記事で言いたいのは
「サラブレッドの方がスポーツホースより優秀だ」
ということではありません。
Humble GloryもArtistも、サラブレッドの中では特別な才能を持った馬でしょう。
そしてその才能を見つけられるライダーと出会いました。
適切な調教を受け、グルームや獣医師、装蹄師など多くの人に支えられて世界選手権までたどり着いています。
どれだけ才能のある馬でも、その才能を誰にも見つけてもらえなければ能力が表に出るとは限りません。
✨ 逆に言えば
「才能のある馬が、その才能を見つけてくれる人と出会ったとき、
想像もしなかったところまで行くことがある」
ということです。
Humble Gloryはそれを分かりやすく見せてくれた一頭なのかもしれません。
🐴 いつものサラブレッドにも何かあるかもしれない
ここで世界選手権から私たちの身近な馬に話を戻してみます。
いつもレッスンで乗っているサラブレッド。
競馬ではそれほど活躍できなかった馬。
少し神経質だったり、動きが硬かったり。なかなか思うように乗れない馬もいるでしょう。
競技会で立派な外馬を見ると
「こんな馬に乗れたらなあ……」
と思うこともありますよね。
もちろん、いつものレッスン馬が実は世界選手権を走れる馬だった!なんて話ではありません。
でもその馬にも、まだ誰も気づいていない得意なことがあるかもしれません。
馬場が得意かもしれない。
障害を飛ばせたらびっくりするほど上手かもしれない。
クロスに出たら意外なくらい大胆かもしれない。
あるいは競技ではなく、初心者を安心して乗せることにとてつもない才能を持っているかもしれません。
サラブレッドは本来、速く走るために生産された馬です。
でも競馬を終えたところで、その馬の能力まで終わるわけではありません。
🌟 世界選手権14位になったHumble Gloryも、
最初から「世界選手権に出る総合馬」として生産されたわけではありません。
競走馬として生まれて実際にレースを走りました。
その後は別の道へ進み、そこで新しい才能を見いだされています。
才能のある馬が、その才能を見つけてくれる人と出会えば、想像もしなかったところまで行くことがある。
そう考えると、私たちが普段レッスンで接しているサラブレッドたちの中にも、
まだ誰にも気づかれていないびっくりするような才能が眠っているのかもしれません。
🐴 次にいつものサラブレッドに跨ったとき
「この馬、本当は何が得意なんだろう?」
そんな目で見てみるのも面白いかもしれません。

