2026/03/13 10:00


レッスンで知っておきたい発情期のサイン


春になると、レッスンで「今日はこの馬ちょっと機嫌が悪いな」と感じる日がありませんか。


昨日まで普通だったのに、急に反応が違う。そんな経験をしたことがある人も多いと思います。


乗馬クラブでは、牝馬が発情することを、「ふける(フケる)」と言うことがあります。


いつもは素直なのに、集中しなかったり、尾を振ったり、


鞍を締めるときに敏感な様子を見せたりすることがあります。


こうした変化は単なる気分ではなく、牝馬の発情周期が関係していることがあります。


乗馬クラブでは会友馬に乗ることが多いですが、


馬の体のリズムを少し知っておくだけでも、


レッスンの受け方が変わることがあります。


まずは牝馬の発情について整理してみます。




牝馬の発情とは


発情(Estrus)は、牝馬の繁殖周期の中で受胎可能な期間を指します。


この期間には体内でホルモンの変化が起こり、主にエストロゲンの影響によって排卵が起こります。


牝馬の発情周期は大きく2つの段階に分かれます。


発情期(Estrus)


牝馬が受胎可能になる期間で、この時期には行動の変化が見られることがあります。


発情休止期(Diestrus)


排卵後の期間で、この間は牡馬に対して反応が弱くなります。


この2つの期間を合わせた周期は平均して約3週間(約21日)です。


発情期は通常
5〜7日ほど
続き、その後は比較的落ち着いた状態になります。


また馬は長日動物と呼ばれる動物です。


これは日照時間の長さがホルモンのバランスに強く影響するためです。


多くの牝馬は冬の間、無発情期と呼ばれる休止状態に入ります。


そして春になり日照時間が長くなると、光の刺激が脳下垂体に伝わり、


ホルモン分泌が活発になって再び発情周期が動き始めます。


このため春になると、牝馬にいわゆる「春の落ち着きのなさ」が見られることがあります。


突然性格が変わったように見えることもありますが、実際には体内のホルモンの変化による自然な現象です。




発情期に見られるサイン


牝馬の発情の現れ方には個体差があります。


ほとんど変化がない馬もいれば、行動やパフォーマンスに影響が出る馬もいます。


よく見られるサインには次のようなものがあります。


・気分のムラ


・イライラした様子


・頻繁に少量の排尿


・尾を持ち上げる、尾を振る


・騎乗中の集中力低下


・鞍を締めるときの敏感さ


・耳を伏せる、不機嫌な態度


・騎乗への抵抗


・跳ねる、蹴る


特に注目したいのは鞍周りの敏感さです。


牝馬の卵巣は鞍の少し後ろの位置にあります。


そのため違和感があると背中周りが敏感になり、


尾を振ったり騎乗を嫌がるような反応が出ることがあります。


時には「わがままな行動」に見えることもありますが、


実際にはホルモンによる体調の変化が原因である場合もあります。




ただし発情だけとは限らない


もちろん、こうした行動の変化がすべて発情によるとは限りません。


鞍のフィットや体の疲れ、体調など、別の理由が影響していることもあります。


だからこそ、「今日は少し違うな」という小さな変化に気づくことが大切です。




レッスンで意識したいこと


乗馬クラブでは、発情周期に合わせてトレーニングを調整することは難しい場合も多いでしょう。


しかし、いつもと違う様子に気づくことはとても大切です。


例えば


・今日は集中しにくそう


・鞍周りに敏感そう


・いつもより落ち着かない


といった変化に気づいたときは、少し丁寧に乗ることを意識してみるとよいかもしれません。




馬は毎日同じではない


馬は生き物です。


そのため、いつも同じ扶助を出せば必ず同じ反応が返ってくるというわけではありません。


体調や気分、環境によって反応が変わる日もあります。


牝馬の発情周期も、その理由のひとつです。


例えば、普段は素直に歩いてくる馬でも、ある日は洗い場に入りたがらないことがあります。


昨日までは普通だったのに、今日は入口で止まってしまう。


そんな経験をしたことがある人も多いと思います。


それは騎乗中だけの話ではありません。


引き馬のとき、馬装のとき、あるいは馬房で無口をつけようとしたときなど、


普段は問題なくできることでも急に反応が違うことがあります。


乗馬をしていると、「昨日できたことが今日はできない」と感じることがあります。


そんなとき、つい馬のせいにしてしまうこともあるかもしれません。


しかし、馬の側にも体のリズムがあります。


そのことに気づくだけで、見え方は少し変わります。




馬と上手く付き合うということ


その日の馬の状態を見て、今日はどこまでできるのか、何を求めるべきなのかを判断する。


そうやってその日できることとできないことを見極めて付き合える人が、


少しずつ上達していくのだと思います。


そして、そういう乗り方をする人は、結果的に馬にも好かれる人なのかもしれません。




最後に


この記事を通して、牝馬の発情について少しでも理解が深まり、


馬も人も必要以上にパニックにならずに済めばと思います。


いつもは素直な馬が、ある日突然いつもと違う反応を見せると、こちらもつい焦ってしまいますよね。


でも、そうした変化には馬なりの理由があることもあります。


少し立ち止まって「今日はいつもと違うな」と気づくだけでも、見え方は変わるかもしれません。


馬は機械ではなく、生き物です。


だからこそ毎回同じにはならない。


それが乗馬の難しさであり、同時に奥深さでもあります。